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ハロウィンの仮装のように、中途半端な変身しか出来ない狼男。
それが生まれついての私の存在で、満月の夜以外は人として過不足なく生活できるけど、月のまん丸な夜は一人家の中にこもる。
牙もないから人を襲うことはしないし、人を怖がらせる気もないのだけど、実際はそうもいかず、ともすれば人に襲われることもあると知っている。

そんな日々を過ごしていたある日、怪我をした狐を見つけた。
後ろ足を引きずってフラフラと歩きづらそうにしていたから、抱えて家へと連れ帰った。
近づいた時から、捕まえて、更に家に帰るまで、彼は酷く怯えて暴れて、何度も引っ掻かれたけど、私は決して彼を離さなかった。
だって自然は厳しいからね。
私に捕まってしまうようでは、野生の獣に襲われてしまうのだって時間の問題だ。
野生にしては美しい毛並みを持つ彼は、もしかすると何処かで飼われている狐なのかもしれない。
それにしては人慣れしていない気もするけれど…


手当を終えても、あまり動くと傷が悪化する恐れがあったので、引き続きここにとどまってもらうことにした。
うっかり外に出てしまわないように戸締りはきちんとして、昼間は出かけて夜戻る。
彼は部屋の隅で小さく丸く身を縮こめていたけれど、日を追う毎に少しずつ慣れてきてくれているようで、私は嬉しくなったものだ。

そしてまた満月の夜が巡ってきた。
日が落ちて辺りが暗くなる。
私の頭には獣の耳が、お尻からは獣のしっぽが顔を出す。
ああ今夜も憂鬱だなとため息をつくいたところで、背後に気配を感じた。

そうだ、今夜は彼が居るのだった。

思い出して振り返ると、そこに居たのは、月色の大きな耳にふさふさのしっぽをつけた、美しい少年。
紫水晶のような瞳に涙をいっぱいに浮かべて、かたかたと震えている。

「あの、ぼく、こんやこそたべられてしまうんですか」
「ええ!? そんなことはしないよ、そしてしない!」

出会いから今まで、私たちの間には誤解があった。
私は狼男のなりそこないで、彼は化け初めの若い狐。
見た目は人と変わらない私の本性を、彼は聡く感じ取っていたらしい。
食べられないと分かってほっと体の力を抜き、すぐにざっと青くなった。
「僕は恩人になんて態度を!」
恩知らずでござる切腹でござると騒ぐ彼を、慌てて宥めた。
「気にしなくて良いんだよ。誤解が解けて私は嬉しい」
そして今、私たちの姿形はとても似ている。
私はそれを嬉しく思うよ。
そう伝えると彼は、私の耳としっぽをじっと見て、自分の耳としっぽをそよがせて、
そして小さく「僕もです」と言い、大変可愛らしくはにかんだ。
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